最高裁判所第二小法廷 昭和45年(オ)625号 判決
上告人
成豊子
外一名
被上告人
林ゆき
代理人
加藤義則
福永滋
村瀬鎮雄
内田安彦
主文
上告本件を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告人らの上告理由(三を除く)について。
第一審判決は被上告人の上告人らに対する請求を全部認容したが、控訴審において、被上告人は右請求を減縮(訴の一部取下)し、右請求の減縮について上告人らが同意したものであることは、本件記録に徴し明らかである。そうとすれば、右請求の減縮はそのとおり効力を生じたものというべきである。そして、右のとおり控訴審において請求が減縮された場合に、被上告人の請求を相当とし、控訴を理由がないと判断するときは、理論的には単に控訴を棄却すればよいのであるが、第一審判決が債務名義となることを考え、そのうちなお実質的に債務名義として有効に存続している部分を明確にすることは、実務上便宜であるわけである。原判決は、このような目的から所論のように判決主文に表示したものであることは、原判文上明らかである。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用できない。
同三について。
原審において上告人らから証人若尾桂市の申出があつたが、原審がこれを取り調べなかつたことは記録上明らかであるが、右申出の証人が唯一の証拠でないことも記録上明らかである。ところで、当事者の申し出た証拠が唯一の証拠方法でないときは、特段の事情のないかぎり、申出につき許否を決定することなく結審しても違法でないことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和二四年(オ)第一三八号、同二七年一一月二〇日第一小法廷判決、民集六巻一〇号一〇一五頁)。そうとすれば、特段の事情の認められない本件においては、原判決に所論の違法はないものというべく、論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(城戸芳彦 色川幸太郎 村上朝一)